夢と希望に向かい駆けてきたこれまでの日々、そして今、胸にする想いを伝える

7月28日、三沢市国際交流教育センターで、井上康生氏による講演会が開催されました。

 

本講演会の主催者であるNPO法人 柔道スポーツ育成会は、柔道やスポーツを通じた青少年の健全育成、生涯スポーツ社会の構築を目指し、三沢市のまちづくりに貢献したいと今年4月に設立した団体。東日本大震災で被災した三沢市の復興、さらなる活性化の一助になればと第1回事業として本講演会を開催したものです。講師の井上康生氏は、シドニーオリンピックでの金メダル獲得をはじめ世界選手権と全日本選手権をそれぞれ3連覇、指導者となった現在は東海大学柔道部副監督と全日本男子柔道監督を兼務するなど、日本柔道の最前線で活躍する柔道家の一人。柔道スポーツ育成会の蹴揚代表が柔道家でもあることから、柔道の教育的価値を理解しつつ夢や目標を持つことの大切さを伝えるには井上氏が適任と依頼。井上氏も多忙なスケジュールを工面して快く承諾し、本講演会が実現したとのことです。氏の言葉が聴ける貴重な機会とあって、柔道やスポーツの関係者、未来の井上氏を目指す小中学生や高校生など、約260人が会場に詰めかけました。

 

講演に先駆け、三川目小学校児童が、東日本大震災で太鼓を流されながらも多くの人々に支えられ甦った「海鳴り太鼓」を力強く披露。続いて蹴揚代表が講演会開催に至った想いを語り、駆け付けた多くの来賓を代表して種市市長が「ご来場の皆さんに(この講演会から)夢と希望、そして勇気を持ち帰っていただきたい」と呼び掛けました。

 

「『柔道と私』~夢と希望に向かって~」と題した講演の内容は、井上氏のこれまでの半生と、その時々の想いでした。幼少時代、柔道の師でもあった父が、その教えの中で重んじたのは基本であり人間性。時には厳しい指導を受けることもあったが、納得いく説明があり、信頼関係を築くことができたと言います。その後、目標を持ち続け、自らを信じ続けて母に捧ぐ金メダルを獲得したシドニーオリンピックでの喜びと感謝。思わぬ敗戦を喫したアテネオリンピックでの反省。指導と柔道再建にかける想い。海外生活で得た、かつてのライバルとの邂逅と友情、スポーツが平和や社会に貢献できることの実感…。約1時間の講演。要所となる場面の画像をスクリーンに映しながら、時折手振りを交え、しかし真っ直ぐに客席を見つめ語る氏の言葉には穏やかなれど熱い想いがこもっていました。

「今だからこそ嘉納治五郎先生の心『精力善用 自他共栄』の本当の意味を改めて考える必要があるのではないか。これがあっての私自身。その心を大事にすれば必ずや、この青森、素晴らしい日本を取り戻していける。そしてみんなから信頼・応援される柔道を取り戻していける。その心をしっかりと持ち頑張りたい」。感謝とともに氏が最後の想いを伝えると、客席からの万雷の拍手が会場を包みました。