地域の人々が育て守ってきた松林の大切さを、未来担う子どもたちへ

郷土の文化財の収集、保管・展示をしながら教育環境の場を提供する歴史民俗資料館では、昨年度から市内学校を対象に出前授業を実施。人・自然・教育研究所所長の川村正氏が講師を務め、郷土に関わるさまざまなメニューで、子どもたちに郷土の財産や魅力を教えています。市内北部に位置し、東日本大震災では多くの人が避難したおおぞら小学校は今回、『海岸防潮林と石橋健二』をテーマに出前授業を希望。9月26日、おおぞら小学校の校内外で、同校4年生21人が郷土の自然とそれを築いてきた歴史を学びました。

 

まず川村氏は、東日本大震災や三陸地震など、過去に三沢を襲った津波の様子や被害を児童に説明。犠牲者の数に驚きながら、過去から現在に近づくにつれて津波の規模に反比例して被害が少なくなっていることに気付く児童たち。さらに、太平洋沿岸に植えられている松林が津波の被害を軽減させた一因ではないかと気付いた児童たちに、松林が持つさまざまな役割を考えさせました。「やませを防ぎます」「飛砂も防ぎます」。次々と手を挙げ答える児童たちに、決して最初からは答えを教えない川村氏。自ら考えることで児童たちの気付く力や理解力を育てているようでした。また、三沢のみならず県内の松の植林に献身的に尽力してきた塩釜の石橋健二氏をはじめ、多くの地元の人々が松林の植林に関わっていることを伝え、「津波の被害を軽減し、風を防いで農作物の収穫を増やし、魚付林としての効果もある松林には、多くの地元の人々の努力があることを忘れないでください」と話しました。

昼食を挟んで川村氏と児童たちは、バスに乗り移動。三沢漁港や四川目の慰霊碑、淋代の展望台などから、今なお残る津波の跡と松林の姿を目の当たりにした児童たちに、津波の怖さと防災意識の大切さを教える川村氏。さらに「多くの地元の人が育て守ってきたこの松林を、今度は皆さんが受け継いでいってほしい」と力強く伝えました。