文武両道、地域とともに生徒を育んできた三沢商業。決意を新たに次のステージヘ

 

10月5日、三沢市公会堂大ホールで、青森県立三沢商業高等学校の創立50周年記念式典が行われました。

 

この日のために市内・県内からそうそうたる来賓や関係者が参列した会場。その、厳かな雰囲気の中で、卵の割れる音とともに登場したのは50周年記念キャラクター『おおとりくん』でした。生徒が考案したという『おおとりくん』は、同じく舞台に並ぶ同校吹奏楽部を紹介。マーチングバンド・カラーガード全国大会には10回以上出場、昨年までには3年連続の銀賞受賞を果たし、今年も念願の金賞目指して猛練習に励む同校吹奏楽部が演奏・演技を披露し、華やかに式典は幕を開けました。 

文武両道、倫理観と人間力を備えた人材育成

青森県立三沢商業高等学校が開設されたのは1963(昭和38)年。三沢駅から同校までの間にある大きな坂道を、これまでに多くの生徒たちが歩いてきました。山口章校長が「開校時から全国に誇る自慢の宝」と話す生徒は現在600人。その文武にわたる活躍は、三沢商業高校の名を全国に知らしめています。

開校直後から好成績を収め続けている珠算部は、県大会珠算競技で現在25連覇中。今年の個人電卓の部では全国優勝者も輩出。県高校ワープロ競技大会で9年連続17回目の優勝を果たしたワープロ部。吹奏楽部はマーチングのみならず吹奏楽コンクールでも上位成績を収めています。一方、運動部も負けてはいません。野球部やラグビー部、サッカー部、バスケットボール部やソフトテニス部など、ほぼ全ての部が全国大会出場を果たしています。先輩から後輩へと受け継ぎながら快進撃を続ける要因について山口校長は「高みを目指す先輩と、その先輩を越えようとする後輩の進化のシステムがあればこそ」と話していました。

また、変化する社会全体のIT化・多様化・グローバル化に対応できる能力が必要と、人材育成にも力を注ぐ同校。倫理観に支えられたコミュニケーション能力と人間力ある人材を育てるには、知識を詰め込むだけでなく、自ら体験して身に付けることが不可欠として、3年生による課題研究に取り組んでいます。農協、漁協、商工会など7つに分かれた部会では、毎年異なるテーマで地域の専門家から企画・商品開発・販売など地域活性化を直に体験。その成果の一部は、実際に新たな地産商品として注目を集めています。

新たなる挑戦

来賓や列席者を前に式辞を述べた山口校長は、三沢商業高校が歩んできた50年を振り返り、現在の活動を紹介。また、50周年を機に新たに始めた『挑戦』として、北海道・東北では初となる『税理士・公認会計士養成Haul-A(ホールエー)プロジェクト』を紹介しました。これは、高崎商科大学と協定を結び、日本最先端プログラムを受け、高校3年生までに日商簿記1級取得を目指すもので、同大学での夏合宿の交通費・受講費免除など税理士・公認会計士を目指す生徒には最短距離の夢のプログラムとのことです。新たな挑戦に指導者としての決意を表す山口校長。歴代校長をはじめ教職員、県、市、関係団体、保護者そして地域の人々に敬意と感謝、そして「倫理観と人間力を持って社会貢献するグローバルビジネスリーダーの育成、そして本校の更なる発展に、職員一同心を一つにして邁進することを誓います」と、決意の想いを伝えました。

 

 

続いて、50周年記念事業協賛会の気田会長があいさつし、歴代の後援会長やPTA会長、校長に感謝状を授与。江渡衆議院議員や種市市長など来賓が祝辞で華を添えました。生徒を代表して喜びの言葉を述べた同校3年の生徒会長・附田将くんは、「社会の中で何を生かすべきかを常に考え行動できる人間になるために、これからも精一杯努力していきたい」と決意の思いを伝え、最後には全校生徒600人を含む約900人の列席者全員で同校校歌を合唱。三沢商業高校の更なる発展・活躍に想いを馳せ、式典は幕を閉じました。

 

金メダリストからのメッセージ

式典後、同じ会場で舞台を整え、特別記念講演を開催。ロンドンオリンピック女子レスリング48kg級で金メダルを獲得した八戸市出身の小原日登美氏が『最初で最後のオリンピックを目指して』と題し、これまでの半生で得た経験や想いを三沢商業高校の生徒に伝えました。

幼い頃からレスリングを始め、早くから日本を舞台に活躍した小原氏ですが、けがやライバルの存在など、その道のりは決して輝かしいばかりではなかったと言います。挫折や苦悩を抱えながら歩いてきたその道のりの中で小原氏を立ち上がらせ、支えてきたのは、友人や家族、夫たちの言葉。「人生はどこからでもやり直せる。諦めるな」「今しかできないんだから」「オリンピックに魔物はいない」。何度も引退を決意し、諦めそうになりながらも、ロンドンオリンピックで金メダルを勝ち取った小原氏は「言葉の力はすごいと実感しました。勝てたのは多くの人が支え、努力してくれたおかげ。今は感謝の気持ちでいっぱいです」と話し、さらに「目標を見失うことは、何よりつらいこと。みなさんも諦めず、そして感謝の気持ちを忘れないでください」と伝えました。