大衆が同じ夢を見ていた時代を振り返り、『ふるさと』を感じてほしい

4月5日、三沢市寺山修司記念館で、今年最初の企画展『競馬場で会おう  寺山修司珠玉の競馬エッセイ』が始まりました。

 

青森県で生まれた寺山修司は、多感な少年時代を三沢市で過ごし、歌壇にデビュー。国内外で高い評価を受けた演劇実験室『天井棧敷』をはじめ、詩人、小説家、作詞家、映画監督、劇作家など幅広い分野で活躍し、亡くなってからもその作品は多くの人々に影響を与え続けています。没後30年となった昨年は、三沢市寺山修司記念館を筆頭に、全国各地で記念イベントなどが開催。各界において今もなおその存在は大きく、愛されていることを広く知らしめました。

そして今年、寺山修司記念館が企画展のテーマに選んだのは『競馬』。寺山修司が18年間にもわたって報知新聞を中心に書き継いできた競馬エッセイの原稿やエッセイ集、切手、パネルなど、常設展では展示していないものや、東京競馬場所蔵の資料などを含む約90点を展示しました。同館ではこれまでに、寺山修司とスポーツをテーマとした企画展を開催したことはありましたが、競馬に特化したのは今回が初。生前、ギャンブルでありながら、大衆が夢を追い、見るスポーツとして盛り上がっていた競馬のロマンに惹きつけられた寺山修司。修司の作品に数多く盛り込まれている『血』や『ふるさと』といった要素に通じるものがあり、寺山修司と親交のあった同館の佐々木館長は「父と母の血を受け継ぎ、地方で育った競走馬が中央で活躍していく姿に自分の存在を重ねていたのではないか」と話します。また一方で、『敗れていく者』への視点を取り入れた作品も多く、エッセイの中に登場する人物を通して、一般大衆の夢の在処が語られています。佐々木館長は「当時の、人々が大衆として(競馬など)同じものを見、意見を言葉にし、同じ夢を共有できていた時代を振り返って感じてもらいたい。また、馬と共にある自然を『ふるさと』として我々が持っていることを直感的に感じてほしい。その上でエッセイや競馬に対する寺山修司の想いを読み解いてもらえれば」と話していました。