注目集まる三沢市の野口貝塚はじめ、県内貝塚調査の成果や課題を発表

 

11月8日、三沢市公会堂で青森県考古学会秋季大会が開催されました。

 

春と秋の年2回開催する同大会は今回、貝塚の歴史的重要性が近年高まっていることから、県内の貝塚調査をテーマに。そこで、昨年度から発掘調査を始め注目を集めている野口貝塚の所在地、三沢市で初めて開催されることとなりました。県内考古学関係者だけでなく、興味・関心を持つ一般の方も含め約40人が参加。最初に、元文化庁記念物課主任調査官の岡村道雄氏が「近年の貝塚研究の動向と課題」と題して基調講演を行いました。岡村氏は縄文時代の貝塚には他時代とは異なり「送りを伴う貝塚」であると指摘。貝塚に祭壇を作ったり、亡くなった人を埋葬するなど「仏教の輪廻に通じる思想があったのでは。その古くから自然の中で考えられてきた哲学を現代人は学ばなければならない」と、自身の考えを語りました。また、三沢市の野口貝塚にも触れ、「早くから安定した定住方法を確立し、多くの貝塚を残す重要な遺跡」と全国の中でも貴重な貝塚遺跡であることを示しました。

続いて、最前線で活躍する県内各地の研究者が調査事例を発表。調査研究の成果や過去または現在も抱える課題などを伝えました。三沢市からは市生涯学習課の長尾正義氏が、市内に17カ所ある貝塚の特徴や縄文海進との地形的関係を解説。同課の工藤司氏は野口貝塚遺跡の概要や発掘調査の経緯と進行状況、これまでにわかったこと、今後の課題などを発表しました。調査は現在も進行中ですが、これまでの発掘物から「縄文人がどのような暮らしをしていたか」分かったことも多いとのこと。しかし、調査を進めたことで課題も増えたという工藤氏は「これからもコツコツと調査を進めたい」と話していました。会場には、調査資料の他、実際に野口貝塚から発掘された貝や土器なども展示。参加者は岡村氏や事例発表者の貴重な話に、参加者は熱心に耳を傾けていました。