多くの人に支えられ、苦楽を共にした仲間と勝ち取った「金色の切符」

11月3日と4日の2日間にわたり、宮城県総合運動公園「グランディ・21」セキスイハイム スーパーアリーナで『第41回 マーチングバンド バトントワーリング東北大会』が開催され、マーチングバンド部門・高等学校の部に、青森県立三沢商業高等学校吹奏楽部が出場。強豪ひしめく中、迫力の演奏と華麗な演技で見事、金賞を受賞し、全国大会への出場権を手にしました。

多くの人々に支えられ臨んだ大舞台

編隊を組み歩きながら楽器を演奏する、軍楽隊のパレードなどでも知られてるマーチングバンド。管楽器を演奏する「ブラス」や動きながら打楽器を演奏する「バッテリー」、打楽器を置いて演奏する「ピット」、フラッグなどを使い体の動きで表現する「カラーガード」などのセクションが複雑に連携して、美しい動きとハーモニーを生み出します。この大会では、舞台の広さや時間、人数など一定の条件の下、出場団体の演技・演奏の音楽や視覚の効果、管楽器や打楽器、動きの技術といった5項目で審査員が審査し、得点に応じて「金賞」と「銀賞」「銅賞」を授与。さらに「金賞」受賞団体の中から得点上位の数団体が全国大会へ推薦されます。全国の予選でもあるこの大会に出場する団体は、いずれも先に開催された各県大会で上位成績を収め、出場権を勝ち取ってきた強豪ばかり。三沢商業高校吹奏楽部が出場したマーチングバンド部門・高校生の部にも、東北中から集まった14校がエントリーし、うち5校にのみ許される全国大会出場権を賭けて競い合いました。

 

三沢商業高校吹奏楽部の部員は、現在68人。一昨年、昨年と2年連続で全国大会での銀賞に選ばれていますが、「今年こそは金賞を」と部員、先生、父兄が一丸となって、朝早くから放課後遅くまで、休日もひたすらに練習を重ねてきました。時に厳しく指導し、時に精神的なケアもしながら部員を導いてきた先生たち。仕事や家事の合間を縫って昼夜問わず衣装や小・大道具を作りながら、練習後の差し入れをするなど陰から支えてきた部員の父兄ら。後輩のために駆けつけ、指導し励ましてきた同部の先輩OB・OG。多くの人々が見守る中、全国大会への出場権、諸事情からこの大会に出場できなかった部員たちの想いを背負い、何よりも自分たちがこれまで練習した最高の演技・演奏を披露するため、三沢商業高校吹奏楽部は晴れの大舞台に臨みました。

迫力の演技・演奏

本番直前。会場を背に、当日の朝まで重ねてきた厳しい練習を一つ一つ思い出すかのように目を閉じ、あるいは一点を見据えて集中する部員たち。前の団体が終わり、会場に向けた表情は、意外なほど明るく朗らかでした。互いに合わせる視線には、これまで苦楽を共にしてきた仲間でこそ伝わる、言葉以上のものがあったのでしょう。気合の入った掛け声と同時に、一斉に舞台へ駆け出しました。

静寂の中から始まった三沢商業高校吹奏楽部の演技・演奏。「ピット」が生み出す力強いリズム。全体でまるで一つの生き物のように滑らかに動きながら迫力の音を奏でる「ブラス」と「バッテリー」。さらに、力強くも美しく笑顔で舞う「カラーガード」が華を添え、8分間、会場中の人々を惹きつけて離しませんでした。 

分かち合う喜び、頬伝う涙

全ての団体の演技・演奏終了後、主催者が出演順に成績を発表。成績は得点制で、審査員の合計得点によって金賞(ゴールド)と銀賞(シルバー)が読み上げられていきます。観客席には、手を握りしめ、顔を伏せて一心に祈る部員たちの姿。他の強豪たちの好成績が続く緊張の時間。そして…ついに読み上げられた結果は同部初となる1位金賞(ゴールド)。さらに、全国大会出場権獲得の言葉。一斉に顔を上げ、歓喜の声とともに手をたたき抱き合う三沢商業吹奏楽部の部員たち。団体代表として閉会式に並ぶ部員らにも浮かぶ喜び、そして安堵の表情。ある部員は想いを噛みしめるかのように目を閉じ、ある部員の瞳には輝く涙が。閉会式を終え、観客席で合流した部員たちは、心の底から喜びを分かち合っていました。

 

アリーナ外で大会最後のミーティング。同校の顧問の一人、佐々木先生から告げられた、部門出場14チーム中で最も高い総合得点を獲得したという言葉に拳を上げ、飛び上がって喜ぶ部員たち。強豪ぞろいだったこの大会。過去の実績があるからこその重圧もあったことでしょう。言葉にならない声と涙と笑顔が入り乱れていました。また、自分たちの力だけではないことを知る部員らは、応援に駆け付けた父兄や先生に改めて感謝の気持ちを伝え、会場のアリーナにも「ありがとうございました」と深々と頭を下げていました。 

 

しかし、彼らの本当の闘いはこれからです。12月16日、埼玉県で開催される「マーチングバンド バトントワーリング全国大会」で想いを遂げるため、三沢商業高校吹奏楽部はさらなる一歩を踏み出しました。